意外と知らないお酢の種類!それぞれの特徴やおすすめレシピも紹介

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料理に多用され、健康に役立つ効果も知られているお酢は、食卓に欠かせない調味料のひとつです。一方で、「種類が多くて、違いがわからない…」と思っている方は意外と多いのではないでしょうか。 多様な種類のお酢をうまく使いこなせるようになれば、料理のレパートリーも広がり、食生活が今よりも豊かになるはずです。本記事では、お酢の主な種類と特徴を解説したうえで、それぞれの味や風味を活かしたレシピをご紹介します。

お酢の種類と特徴

お酢は、その土地の農産物を原材料に製造されることが多く、世界中に多種多様な種類が存在しています。近年では、一般家庭でもバラエティーに富むお酢を目にする機会が増えました。食品表示基準法では、食酢は次のように分類されています。

食酢の分類

食酢

醸造酢

醸造酢

穀物酢

穀物酢

米酢

米黒酢 など

果実酢

果実酢

りんご酢

ぶどう酢 など

合成酢※1

※1:氷酢酸や酢酸を水で薄めて、砂糖類や調味料を加えたもの。家庭用はほぼない。

なかでも食卓でなじみの深い代表的なお酢は、以下のとおりです。

穀物酢

醸造酢のうち、1リットルあたり40グラム以上の穀類を1~2種類以上使用した食酢が穀物酢と呼ばれます。

醸造酢とは、穀類や果実、野菜などを原材料に酢酸発酵させた液体調味料のなかでも、酢酸や氷酢酸(純度99%以上の酢酸)を使用していないものが該当します。

穀物酢の主な原材料は、小麦や米、とうもろこし、酒粕などです。さっぱりとした酸味が特徴で、加熱しても比較的香りが残ることから、煮物や炒めものなどの調理に適しています。

米酢

米酢は、米の使用量が1リットルあたり40グラム以上の穀物酢です。日本では、古くから米を原材料とする米酢の生産が行われてきました。

お米由来のほんのりとした甘みと旨味、クセのない酸味が味わえます。加熱により風味が損なわれやすいので、酢の物やドレッシングに加えると、本来の味わいが引き立ちます。

黒酢

玄米や米(精白したものを除く)、大麦などを原材料とする穀物酢です。日本農林規格で、1リットルあたり180グラム以上の米が使用されており、かつ発酵・熟成によって自然に褐色または黒褐色に着色したものと規定されています。

深い琥珀色と豊かな香りに加え、まろやかな味わいが特徴です。中華料理や炒めものなどに適しています。

栄養面でも優れており、ビタミンやミネラルを含むほか、タンパク質の合成に不可欠なアミノ酸も豊富です。アミノ酸のなかでも、体内では合成できない必須アミノ酸全9種のうち8種をバランス良く含有しています。

果実酢

果実酢とは、1~2種類以上の果実を用いた食酢のことです。1リットルのうち、果汁の搾り汁を300グラム以上使用することが、日本農林規格で定められています。りんご酢やぶどう酢も果実酢の一種です。

さわやかな酸味のなかに、果実ならではの甘みも感じられるのが果実酢の特徴です。フルーティーですっきりとした味わいなので、マリネやドレッシング、ドリンクなどに適しています。

バルサミコ酢

原材料のワインとぶどう果汁を煮詰めて、木樽で長期間熟成させたイタリア生まれの果実酢です。本場イタリアでは、11世紀から受け継がれてきた伝統的な食酢で、現在も生産地や製法などの厳しい生産規則を定めた法律に則って製造されています。

深い色、甘みのあるマイルドな酸味、芳醇な香りが特徴です。イタリア料理やマリネ、ドレッシングなどで多用されており、香りづけのほか、料理に甘みやコクを出したいときにもおすすめです。

調味酢

調味酢とは、食酢にしょうゆや砂糖、香辛料などで味つけしたお酢を指します。調味酢は別名、合わせ酢といわれる場合もあります。

調味酢は、お好みの味で手作りすることも可能です。店頭で流通している代表的な調味酢としては、すし酢が挙げられます。

すし酢

すし酢は、家庭で手軽にすし料理が楽しめるように、あらかじめ砂糖や塩、昆布だしなどで調味されたお酢です。手巻き寿司やちらし寿司のほか、酢の物にも活用できます。

ぽん酢

ぽん酢は、かんきつ果汁に醸造酢を加えたお酢です。「ぽん」はオランダ語でかんきつ類を意味する「ポンス」から由来しています。ぽん酢に醤油や出汁を加えたものを「味付けぽん酢」と言いますが、日本では「ぽん酢」=「味付けぽん酢」として呼ぶことが多いです。

らっきょう酢

らっきょう酢は、らっきょう漬けに使用される調味酢です。らっきょう以外にもにんじんや大根などの野菜の酢漬けにも使うことができるほか、マリネや酢の物のお酢料理を作る際にも重宝します。

お酢の造り方

原材料とともに、お酢の味や風味に大きな影響を与えているのが造り方です。ここでは、お酢への理解をさらに深めるため、製造方法について簡単にご紹介しましょう。

お酢は、原材料から抽出した糖をアルコール発酵させてお酒にした後、酢酸菌を加えて酢酸発酵させることで造られます。

酢酸菌には、アルコールからお酢の成分である酢酸を生成するはたらきがあります。酢酸発酵とは、酢酸菌の力でアルコール成分を酢酸に変化させる工程です。酢酸発酵の方法には、次のふたつがあります。

・通気発酵

アルコール分を含む仕込み液を入れたタンクに空気を送りこむことで、酢酸発酵させる方法です。発酵時間は2~3日ほど要し、さっぱりとした味わいに仕上がります。

・静置発酵

酢酸菌を仕込み液に加えて表面に酢酸菌の膜を張り、発酵を促す伝統的な方法です。空気に触れる仕込み液の表面部分でゆっくりと発酵が進むため、約1ヶ月の発酵時間を要します。コクのある風味豊かな味わいが特徴です。

酢酸発酵が終わったら、1ヶ月程度の熟成期間に入ります。その後、ろ過や殺菌、品質チェックを経て容器に充填され、店頭に並びます。

【種類別】お酢のレシピ

種類によって味わいが異なるお酢ですが、味の傾向は「さわやか・さっぱり」と「まろやか・コクあり」のふたつに大別できます。

果実酢がさわやかでさっぱりとしたお酢の代表格であるのに対して、まろやかさやコクを味わえるのが黒酢です。穀物酢や米酢はその中間に位置し、さわやかさとまろやかさのバランスが取れた味わいといえます。

お酢の種類を知り、それぞれの味の傾向を理解することで、料理に合わせたお酢選びができるようになるでしょう。

穀物酢:夏野菜のさわやか炒め

夏野菜のズッキーニ、パプリカ、オクラをお酢入りのタレで炒めた一品です。香りのよいさっぱりとした穀物酢が、みずみずしい夏野菜のおいしさを引き立てます。

お酢には食欲増進の効果があり、同じく消化を促すオクラと組み合わせることで、食欲不振が起こりやすい夏にぴったりのレシピとなります。カラフルな夏野菜の彩りにも食欲が刺激されるでしょう。

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米酢:ゆで鶏のジュレソース添え

鶏もも肉をゆでて、ソースをかけるだけの簡単レシピです。ゆでた鶏肉を一晩ゆっくりと寝かせることにより、味が染み込んでおいしく仕上がります。

ジュレソースは、調味料を煮てアルコール分を蒸発させる「煮切り」という方法で作るので、旨味のある味わいとなります。華やかな印象になるため、パーティー料理にもいかがでしょうか。

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黒酢:長いもの黒酢サラダ

長いも、にんじん、みつ葉、鶏むね肉が入ったボリューム感のあるヘルシーなサラダです。長いものシャキシャキ感や、まろやかで香り豊かな黒酢ドレッシングが食欲をそそります。

お酢と長いもには、どちらも疲労回復効果があると言われており、体を労りたいときにもおすすめです。

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果実酢:洋風肉じゃが

りんご酢を使って、定番の和風味とは異なる洋風肉じゃがを作ってみませんか。材料のトマトをはじめ、調味料に白ワインやにんにくもプラスすることで、イタリアンテイストに仕上がります。

りんご酢のさわやかな酸味により、牛肉のこってり感を抑えてさっぱりと食べやすくなります。

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バルサミコ酢:きのこのバルサミコ酢ソテー

お好みのきのこ類を、バルサミコ酢や粒マスタードなどでソテーした簡単レシピです。バルサミコ酢のまろやかな酸味や芳醇な香りが、旨味のつまったきのこのおいしさを引き出します。

この一品で食物繊維が豊富なきのこをたっぷりと摂れ、満足感も得られます。副菜にはもちろん、お酒のおつまみにもおすすめです。

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調味酢:ナスの豚肉巻き

淡白なナスにこってりした豚バラ肉を巻いたレシピで、ごはんによく合います。

味付けは、大根おろしや青ネギにぽん酢をかけて、さっぱりといただきましょう。お好みで味のアクセントになる七味も加えてみてください。

詳しいレシピはこちら

まとめ

私たちが普段手にする食酢のほとんどは醸造酢です。原材料の違いにより醸造酢のなかでも、米酢や黒酢などの穀物酢と、りんご酢やぶどう酢といった果実酢などに種類が分かれます。

食酢には、「さっぱり」と「まろやか」の大きくふたつの味の傾向があります。それぞれのお酢の持ち味を理解して、料理に合わせた種類をチョイスすることが、お酢料理の上達への近道です。お酢の力を借りて、食生活をより豊かなものにしてみませんか。