少しの工夫で減塩を無理なくコントロールするコツとは?

この記事は約6分で読み終わります。

「血圧が高めだから減塩したい……。」そうは思うものの、味気ない食生活は誰しも嫌なものではないでしょうか。減塩を続けるには、無理をしないことが大切です。まずは、毎日の食生活の小さなところから工夫と改善を始めてみましょう。 本記事では、塩分の摂りすぎで起こり得る疾患や症状などのリスクを踏まえ、無理なく減塩するためのコツをご紹介します。

そもそも塩分とは

私たちが普段使う「塩分」とは、そもそも何を指しているのでしょうか。塩分は、しょっぱいと感じる味覚の「塩味」とイコールではありません。食品の中に含まれる「食塩」を指し、塩化ナトリウムを主成分としています。

ナトリウムは、健康維持に欠かせない必須ミネラルのひとつですが、摂取が過剰になると、高血圧などの生活習慣病を招きやすくなります。

塩分の摂りすぎを控えたほうが良いとされる理由は、このナトリウムの過剰摂取を防ぐためです。

では、健康維持を考えるうえで、適切な食塩摂取量の目安はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省は、1日の食塩摂取量の目標値を、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満としています。

出典:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省)

しかし、日本人の平均食塩摂取量は1日あたり10.1gで、男性は11.0g、女性は9.3gとなっており、目標値を上回っているのが実情です。

出典:「平成30年国民健康・栄養調査」(厚生労働省)

塩分を摂りすぎるとどんなリスクが?

塩分の過剰摂取が原因となり得る疾患や症状には、次のようなものがあります。

・高血圧になる

・むくみにつながる

高血圧は、長期的な塩分過多が原因のひとつとなり、むくみは一時的な塩分の摂りすぎが影響します。一時的な塩分過多による影響は、ケアさえすれば短期間で元に戻るものの、塩分過多が長期間続けば、大きな疾患につながりかねません。

高血圧の原因になる

高血圧とは、診察室で測定した際の最大血圧が140mmHg以上、最小血圧が90mmHg以上の状態です。日本人のうち約4,000万人が罹患しているといわれています。

出典:「高血圧」(厚生労働省)

高血圧の主な原因は、塩分の過剰摂取です。塩分を摂りすぎると、ナトリウムの血中濃度が上昇します。身体にはナトリウム濃度を一定に維持する機能があるため、体内に水分をため込み、ナトリウム濃度を下げようとします。

血液中の水分が増えて血液量が増加した結果、血管に強い圧力がかかることで、血圧が上がるメカニズムです。

高血圧が続くと、血管が硬くてもろくなる動脈硬化が起こります。

動脈硬化が進行すれば、脳血管の詰まりや破れが起こる脳卒中をはじめ、心臓の冠動脈が狭くなって血流が妨げられる狭心症、冠動脈に血栓ができて血流が途絶える心筋梗塞などを引き起こすおそれがあります。

むくみにつながる

むくみは、塩分の過剰摂取が原因で生じている場合があります。

むくみとは、身体の水分のバランスが崩れて、皮膚の下に水がたまった状態です。先に述べたとおり、身体にはナトリウムの血中濃度を一定に保とうとするはたらきがあるので、塩分を摂りすぎると、体内に水分をため込もうとするため、水が欲しくなります。

水を多く飲むと血液量が増加するので、血液から血管への圧力が上昇し、水分は毛細血管の外へしみ出します。

本来であれば、余分な水分は毛細血管やリンパ管に吸収されますが、水分が皮膚の下にたまってしまい、むくみが生じる仕組みです。

減塩生活を無理なく続けるコツ

小さな改善や工夫から始めることが、減塩を無理なく続けられるコツです。「これならできそう」と思ったものから、早速試してみましょう。

調味料の使用量を調整する

食塩の摂取は調味料からが約7割を占めるため、調味料の使いすぎには十分に気をつけたいものです。調理の際、計量時には目分量ではなく、計量スプーンを使用すると、正確な塩分量の把握につながるので減塩対策に効果的です。

以下に、身近な調味料の塩分含有量をご紹介します。

調味料

小さじ1

大さじ1

5.9g

17.8g

濃口しょうゆ

0.9g

2.6g

薄口しょうゆ

1.0g

2.9g

みそ

0.7g

2.2g

トマトケチャップ

0.2g

0.5g

ウスターソース

0.5g

1.5g

マヨネーズ

0.1g

0.2g

出典:「調味料の上手な使い方」(厚生労働省)

調味料は「かける」のではなく、小皿に出し、料理に「つける」ようにすることで、摂取量を調節できます。

薬味や香辛料、食酢を活用する

塩分を含む調味料を無理に控えれば、「味付けが薄い」「物足りない」と感じて、食事が味気なくなる可能性もあります。そんなときにおすすめなのが、薬味や香辛料、食酢などによる味付けの工夫です。

ねぎ、にんにく、しそなどの薬味、こしょう、カレー粉といった香辛料は、香りや風味がプラスされ、味にメリハリが出ます。

加えて、食酢には、塩味を引き立たせるはたらきがあるため、減塩に役立つだけでなく、酸味がアクセントになって料理がおいしく仕上がります。

塩分の多い食品は控えめにする

塩分の多い食品として、漬物や加工食品(ハム、ベーコン、ちくわ、かまぼこなど)が挙げられます。また、ラーメン、うどんなどの麺料理の汁にも塩分が多く含まれています。

そこで、「漬物や加工食品を食べすぎない」「漬物は、塩分が少なめの浅漬けを選ぶ」「麺料理のスープをすべて飲まない」といった工夫で、食品からの塩分をカットしましょう。

カリウムを含む食材を取り入れる

カリウムは、体内の余分なナトリウムや水分を排出し、血圧を下げるはたらきがあります。カリウムが含まれる主な食材は、以下のとおりです。

分類

食材

野菜類

ほうれん草

果物類

バナナ、アボカド、メロン

いも類

さつまいも、じゃがいも

海藻類

干しひじき、刻み昆布

豆類

大豆、小豆

カリウムは水に溶けやすいので、生で食べる、もしくは汁物やスープといった煮汁を飲める料理にするのが、食べ方のコツです。

外食の際は栄養バランスを意識する

外食が多いと、主食、主菜、副菜がそろった食事を摂る機会が少なくなります。

ご飯やパンといった主食は、エネルギーとなる炭水化物の供給源です。肉料理や魚料理などの主菜はタンパク質、野菜や海藻などを使った副菜は、ビタミンやミネラル、食物繊維の供給源となり、3つが揃うことで栄養バランスを保ちやすくなります。

副菜が欠ければ、カリウムを摂取する機会の減少にもつながります。また、ラーメンや丼ものを単品で頼んだ場合、塩分過多になりやすいだけでなく、主菜、副菜がないために栄養バランスも偏りがちです。

飲食店によっては、メニュー表に料理の栄養成分を表示している店もあるので、オーダーの際は、塩分量や栄養バランスを考えながらメニューを選択しましょう。

まとめ

塩分の多い食生活を続けていると、むくみをはじめ、高血圧を引き起こすリスクがあります。

減塩は、無理なくできるところから始めるのが継続のコツです。普段の食生活では、「塩分量が多い食品を控える」「薬味や食酢を活用する」「ナトリウムを排出するはたらきのあるカリウムを摂取する」などの工夫を試してみてください。

無理のない減塩で、健やかな身体を手に入れましょう。